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       性の事件の実例
 

(1)公然わいせつ
刑法174条では、「公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する」と規定されています。具体的には、どのような場合に公然わいせつ罪となるのでしょうか、事例を見てみましょう。

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意中の女性に告白したところ想いがかなわず、むしゃくしゃしていた東京太郎は、何か気が晴れる方法はないかと考えていた。そして会社からの帰り道、東京都渋谷区○○1丁目1番1号先路上において、通行人の目にふれる状態で、通行中の会社帰りのOLである花子(当時25歳)に対し、自己の陰茎をことさらに露出して示し、もって公然とわいせつな行為をした。
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この事案では、太郎に公然わいせつ罪(刑法174条)が成立します。公然わいせつ罪は、その名の通り、①公然と②わいせつな行為をすることにより成立します。
①「公然」とは、不特定多数が認識しうる状態のことです。実際に不特定多数が認識しなかったとしても、公の路上のように、不特定多数が認識しうる場所で行為をしたのであれば、その行為は「公然」とした行為であるといえます。また、行為を認識する人物が特定されていたとしても、それが多数であれば「公然」といえるとし、30数名いれば「公然」となるとした裁判例があります。
②「わいせつな行為」とは、その行為者またはその他の者の性欲を刺激、興奮または満足させる行為であり、普通の人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為をいいます。一般に、太郎の行為のように、公然と性器の露出をすることや、他人に見せるために性行為やその類似の行為をすることは、著しく性的羞恥心を害されますし、また善良な性的道義観念に反する行為であるといえますから、わいせつな行為ということができます。

(2)わいせつ文書図画の販売、頒布等
刑法175条は、「わいせつな文書、図画、その他の物を頒布し、販売し、または公然と陳列した者」がわいせつ物頒布等の罪に問われると定めています。また同条後段で「販売の目的でこれらの物を所持した者も、同様とする」とされているように、販売の目的があれば所持しているだけでも罰せられます。では、具体事例を見てみましょう。

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東京花子は、夫と共に音楽CD、DVD等の製造、販売を業としている。このところ赤字が続いていたことから、花子は、わいせつな画像を売れば、大もうけできるのではないかと考えた。花子はさっそくインターネットにホームページを開設して、女性の裸体写真等のサンプルを掲載し、無修正のわいせつ画像を電子メールで販売する旨の告知をした。そして、ホームページを閲覧し、ホームページ上で告知されていた銀行口座に金員を振り込んだAに対し、花子は、男女性交の場面等を露骨に写真撮影したわいせつ画像のデータを送信した。もって、花子はわいせつな画像合計20画像を代金2万円で販売したものである。
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この事例では花子にわいせつ図画販売罪が成立します。販売とは、不特定または多数の人に対して有償で譲渡することをいいます。花子はわいせつな写真をインターネットを介して販売していますが、この場合も当然、罪となります。また、写真はデータとして存在しており、実物があるわけではありませんが、入力されたデータが映像化されるものであれば、図画に該当します。

 

(3)強制わいせつ罪
刑法176条は、「13歳以上の男女に対し、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした者は」強制わいせつ罪になると定めています。また、同条後段において、「13歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする」と定められています。わいせつ行為の対象が13歳未満であれば、行為の態様が暴行や脅迫を用いたものでなくても、13歳未満の被害者の同意があったとしても、行為者は強制わいせつ罪として罰せられます。これは、13歳未満の男女に対してのわいせつ行為は、社会通念上、性的法益の侵害の程度が甚だしいことや、そもそも幼児はまだ真意から性的な意思決定をすることができないと考えられているためです。
また、強制わいせつ罪にあたる行為の結果、被害者に傷害を負わせ、または死亡させた場合は、強制わいせつ致死、強制わいせつ致傷罪(刑法181条)が成立します。
具体事例を見てみましょう。

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東京次郎は、会社からの帰り道、通行中のA女(当時19歳)を見かけ、A女がかわいく次郎のタイプの女性であったことから、A女に強いてわいせつな行為をしようと企て、その背後からA女の両腕をつかみ、「キスさせろ、抵抗すると二度と見られない顔にしてやる」などと脅迫した。A女は最初は抵抗していたが、次郎の脅迫に怯え、抵抗をやめた。次郎はそれをいいことに、A女に抱きついて接吻し、さらに右手でA女の乳房を弄び、もって強いてわいせつな行為をしたものである。
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次郎はA女を脅迫して強いてわいせつ行為をしていますから、次郎には強制わいせつ罪が成立します。わいせつな行為とは、性欲を刺激、興奮、または満足させ、かつ普通の人の性的羞恥心を害し、善良な性的動機観念に反する行為をいいますが、176条の強制わいせつ罪は個人の性的自由を保護法益としていることから、接吻もわいせつな行為にあたるものと解されています。
このように、わいせつな行為の内容は強制わいせつ罪において広く解釈されていますが、強姦罪が成立する場合は、強姦罪が強制わいせつ罪の特別法である関係から、強制わいせつ罪は成立しません。

(4)強姦罪
刑法177条は、「暴行または脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者」は強姦の罪が成立すると定めています。また、13歳未満の女子を姦淫した場合も同様となります。強姦罪は、前回述べた強制わいせつ罪(176条)の規定する強制わいせつ行為のうち、強姦行為について特別に規定したものです。被害者となりうるのが女子に限定されているところが、強制わいせつ罪との大きな違いであるといえます。男性が姦淫された場合は、加害者には強制わいせつ罪が成立します。
被害者が13歳以上であるか未満であるかの違いについては、強制わいせつ罪と同様です。また、致死や致傷に関しても、同様に処罰されます(181条第2項)。

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三郎は、自宅アパートの隣に住むB女が自分の好みのタイプであったことから、ある日の深夜、B女を強姦する目的で、自宅ベランダから柵をつたってB女のベランダにおり、窓からB女宅に侵入した。すぐにB女が就寝しているのを認めるや、三郎はB女の寝ているベッドに飛び乗り、B女に馬乗りになって顔面を殴打するなどして反抗を抑圧し、B女を強いて姦淫した。
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この事例では、三郎に強姦罪が成立します。また、三郎は犯行時にB女に暴行を加えて犯行を抑圧していますから、その暴行行為によりB女がけがをした場合は、強姦致傷罪となります。
(5)迷惑防止条例違反(痴漢)
これまで述べてきた4つの性の事件は、すべて刑法が処罰根拠となる犯罪でした。これに対し、いわゆる痴漢行為は、地方公共団体(都道府県等)が定める迷惑防止条例が処罰根拠となる犯罪です。ですから、条例自体の名前は各地方自治体によって異なります。たとえば、東京都の迷惑防止条例の正式名称は、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為の防止に関する条例」です。痴漢は第5条1項「何人も、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない」という規定に違反します。これは、痴漢が「卑わいな言動」に該当しているためですが、行為の態様が悪質である場合は、条例違反ではなく刑法犯である強制わいせつ罪となることがあります。

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四郎は、通勤中、込み合った電車内で、女子高生がちょうど目の前に立っていたため、体を密着させた上で女子高生のスカートをめくって臀部を触った。そして、恐怖のあまり被害者が抵抗できずにいるのをいいことに、ますます犯行をエスカレートさせ、手を下着の中にいれ、陰部を触った。
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この事例では、四郎は条例違反となります。条例でどのような罰則が適用されるかは各地方公共団体によりますが、東京都の場合は6月以下の懲役又は50万円以下の罰金、常習の場合は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(条例8条)となります。

 
   
 
   
 
 
 
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